「ふとるー」
「じゃあ食うな。」

そう言ってあたしの口からクッキーを奪い去ったは、その食べかけのクッキーを何の迷いもなく自分の腹へと下した。それを無気力に見届けた後、新たなクッキーに手を伸ばそうとしたところで額にデコピンをくらった。


「食うなっつってんだろ」
「関係ないでしょー!」


取り上げられたクッキーの箱に手をのばすも、あたしの身長ではには遠く及ばず。クッキーを求める手は虚しくも空をきった。立ち上がって半ば意地になりながら、の手によってどんどん高い位置へ移動していく
クッキーを追って上へ上へと意識を向けていたら、足元にある教科書と辞書の山に躓いてしまった。「う、わっ!」「ええ!?」どっちがどっちの叫びかはわからないけれど、前のめりになったあたしに押されたは、後ろにあるベッドに背中からダイブ。「いッて――!」と同時に、ゴンッと音を立てて壁に後頭部をぶつけたはクッキーの箱をベッドの下に落として頭を抱え込んだ。


「いッてー!馬鹿だろ!お前馬鹿だろ!?」
「え、ご、ごめん!?」


痛い痛いとベッドの上でのた打ち回る様に少し笑いながらこっそり落とされたクッキーの箱へと手を伸ばす、が「食うなよ」というの一言でピタリと動きを止める。ああ、あたしってなんて素直でいい子なんだろう…。無視して食べればいいのに、そうしないのはやっぱりあたしが素晴らしくいい子だからだ。そうに決まってる。未だベッドで頭に手をあてているを横目に見て、ちょっとだけキュン、となる。(いや、別にが痛がってるの見てキュンてしたわけじゃなくてね。)クッキーは食べたいけどやっぱり肥りたくもないわけで。のことだから肥ったからといって捨てられることはないだろうけど、そういう問題ではない。女としてその辺甘えていたら、いけないと思うんだ!


「何だそれ」
「え!?口に出してた!?」
「おもっきし」


頬に熱が集まるのを感じながら、から目を逸らす。すると視界にはクッキー。食べたいなあ、だけど、うん、でも、いや、………くそう。「やっぱり食べる!」「はあ!?」哀しきかな女の性。これから先甘いものに勝てる気は、全く、しない。箱から一枚クッキーを取り出して口へと持っていく。いらっしゃいクッキー。そしてあたしのお腹の中へさようなら。甘い匂いに自然とつりあがる口角を惜しみなくさらせば、クッキーを持ったその手はの大きな手に掴まれて静止してしまった。


「や、ちょっ 食ーべーるー!」
「そんなに食べたいなら…」
「離してよあたしはクッ、」




赤いカーペットにクッキーが転がる鈍い音を聞きながら、体中に広がるクッキーみたいな甘さに酔いしれた。




「俺が1日中食べられててやろうか?」

 

 

 

依存性、有

 

 

(090321 む、むりやり感があるけど、ごめん…!)

 

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