、なにボケっとしてんだよ…委員会もう終わったぞ?」
「……あ、ごめん


周りを見ればぞろぞろと解散していく各クラスの委員の姿。目の前には肩にか鞄をさげてこちらを見下ろす委員の片割れ。今日も何も考えない間に委員会は終わってしまった。まあ、毎回同じようなことを話し合っているので聞く価値はないが。とりあえず何か変わったことがなかったか確認すれば「特には」とのこと。椅子の下においてある自分の鞄を引きずり出して持ち上げた。


「やっと部活いけるー!」
ってほんと部活大好きだよね。」
「おう。俺部活のためにガッコきてっから。…あ、そういえばさ」
「なに?」
って、何で俺のこと名前で呼ばねえの?」


ぴたり。突然立ち止まったあたしに、が疑問符を投げかける。あたしがと呼ぶのには理由がある。はクラスの人気者で、誰とでも仲がいい。だからこのクラス委員にも推薦されたわけだけれども、友好的なの態度に、多くの者はを名前で呼ぶのだ。、と。別にあたしもそれに便乗したってよかった。どんな形であれ好きな人を名前で呼べるのは少し嬉しいから。しかし、もはやと呼ぶのが常識のようになってしまったあのクラスであたしがその名前を呼んだのなら、あたしは本当にクラスメイトとしてしか意識されないのではないだろうか。あたしは欲張りだから他の人と同じなんて嫌だ。自分だけが特別になればいい。そんな独りよがりが、と呼ばせないのだ。


?」
「…なんでか、わからない?」


首だけを後ろに向けて口を開く。首を傾げるに、安心感半分残念な気持ち半分。気づいて欲しいけれど、フラれるのは間違いないから複雑。「部活、行くんでしょ」前を向いて階段へと続く廊下を歩き出す。もともとこの気持ちは誰にも明かさずに卒業するつもりでいたから、今さらこんなことを考える必要もない。今日は帰ってため録りしてたドラマでも見ようか。視界に窓越しの曇り空をいれながらそんなことを思っていた。


「まって、


ふ、と 立ち止まる。
声はあたしが歩いた分だけ遠くから聞こえた。


「俺のこと、そんなに嫌い?」


いつもと違う声音に驚いて振り返る。そこには あたしが知らないが立っていた。
無表情で、でもどこか哀し気な、今まで見たことがない表情に息を呑んだ。「俺さ、」は10メートルくらいある距離を早足にこちらへ歩く。「いちばん名前呼ばれたいやつに、」あと5メートル。思わず片足を引いた。「呼ばれてないんだけど。」突然掴まれた腕に驚く間もないまま引き寄せられた。「え、と…ッ」なんて返答しようか、なんて考えは頭に浮かんでこない。早鐘のように鳴り続ける鼓動を押さえつけるように息をとめて、視界の学生服にただひたすら顔を赤く染めた。「…なあ、」「……っは、い」背中と頭の後ろにある手に力がはいる。「俺…」両手が解かれて肩を押された。「のことが、」先ほどの無表情でも、いつもの満面の笑みでもない、


 

「好きだ。」

 


射抜くような目が、あたしを貫いた。

 

 

 

幼稚惑星
(ワケを知った彼の名字を叫んだ)




(090330 あれ、れ…?こんな話にする予定じゃなかった)
 

 

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