「おれ、引っ越すことになった。」


前を歩くからそんな台詞が聞こえて、思わず足を止めた。「…え?」目を見開いて顔をあげる。「来月の、頭」振り返ったの表情に、自分の顔がみるみる歪んでいくのを感じた。


「ど、うして……」
「…海外に行くんだって、さ」


そう言って指を絡めたに続いて歩き出す。「かい、がい…」「まったく急だよなー」カラカラ笑ういつものを斜め後ろから眺めて目尻に力をこめる。「ンな顔すんなって」いつもと変わらない笑みに不安が過る。は、あたしと離れても平気なのだろうか。あたしは平気じゃない。がいない一日なんて考えられない。少なくとも、今のみたいに笑ってはいられない。



「や、だあ…!」
「え、な 泣くなよ!」

 


俺が泣かせてるみたいじゃん!の右手が頭を何度が往復して、泣きじゃくるあたしを宥める。小さな子供のようにしゃくりをあげてにしがみついた。いつもなら恥ずかしくて、ツンツンしてできないことも、今は不思議なくらい気にならなくて ただひたすらにすがりつく。「…ッ!」背中に回された腕の温もりを、感じることができなくなってしまう。そう考えると、いくら泣き止もうと思ったところでなんの意味も持たなかった。「あー…」「えっと、」「その、」「あの、な、」「……」困ったようなの声に悟った。ああ、別れを告げられるのだろうか。


「…ごめん、


潔く別れを受け入れた方がいいのか。それとも最後まで抗ってイヤイヤと首を振った方がいいのか。決断するよりも前にの口が開かれた。



「今の、全部嘘。」


今までのが嘘だったかのように、涙がぴたりと止まった。
次の瞬間、誰もいない住宅街のの笑い声が響き渡る。


 

 



四月馬鹿の日、何曜日?
(ここまで騙されると思わんかった…!)(わ、笑うなばか!)
(あー可愛かったー)(ばっ、ば、ばか―――!)










(090401 サイトをエイプリルフール仕様にできなくて不貞腐れてるのは他でもないヒツヤです)

 

 

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